第10話

きつねのつね次郎さんからもらえたしょうゆは一杯だけでしたが、そのしょうゆで汁を作りました。あたり一面にしょうゆのとても良い香りがして、明らかにおいしいうどんができる予感がしました。そこで、たぬきのどん平さんは、麺作りの際に少しだけ余ったうどんの切れはしをゆでて、その汁と合わせて食べてみました。

「これは…、うまい。」

今までに味わったことのないとてもおいしいうどんが完成しました。お店にやってくる常連のお客さんにも自信を持って出せそうでした。ちょうどその時、常連のお客さんの一人であるうまのパカラックさんがやってきました。

「パカラックさん。いらっしゃいませ。いますぐうどんを作りますね。」

その名からも分かるように、パカラックさんは海外の出身です。しかし、日本のうどんの味にはとてもうるさい方です。でも、きっと、この極うまのしょうゆで作った新しいうどんは気にいってもらえるはずです。たぬきのどん平ははりきってうどんをゆで始めました。

第10話

第9話

「ごめんくださいませ。たぬきのどん平さん、いらっしゃいますかぁ?」

朝に麺作りをしている時に、ペリカンの運とくさんがやってきました。

「あっ、ありがとうございます。今、ちょうどきつねのつね次郎さんに渡す分の麺が出来上がったところです。これになります。どうぞ、よろしくお願いします。」

「あいよ。じゃぁ、これがきつねのつね次郎さんからのしょうゆになりますね。」

そうして、自分の麺と小さな徳利に入ったしょうゆを交換して、きつねのつね次郎さんのしょうゆ屋で最も熟成のあるしょうゆ一杯をいただくことができました。

「よ~し。これで、極うまのうどんを作るぞ~。」

そして、たぬきのどん平さんは、お店の分の麺作りが一段落した後、いつも以上に腕をふるって汁を作り始めました。

第9話

第8話

「麺ね…」

きつねのつね次郎さんは少し呆れた感じでつぶやきました。しかし、その後すぐに、微笑んだかと思うと、

「なるほど…、どん平さんの麺ね。それもいいかもしれない。それじゃぁ、ペリカンの運とくさんに毎朝、峠に麺を取りにうかがうように伝えておくよ。そうすれば、たぬきのどん平さんも町にいちいち降りてこなくてもいいし…、麺と引き換えにこのしょうゆ一杯を毎日届けると約束しよう。」

「きつねのつね次郎さん、ありがとうございます。」

たぬきのどん平さんはとても喜びました。長年の念願であった極うまのうどん作りの夢がついにかなうような、そんな気持ちに満ちあふれていました。

第8話

第7話

最も熟成のあるしょうゆは驚くほど高いものでした。

「そうだな~。一杯だけでも、たぬきのどん平さんのうどん作りの3日間の稼ぎに相当するかな~ほほっ。」

あまりにもその高い値段にたぬきのどん平さんは尻もちをついてしまいした。でも、どうしてもそのしょうゆを手に入れたくてたまりません。そこで、きつねのつね次郎さんに、こう、交渉しました。

「おいらのつくったうどんの麺を毎日を届けるので、なんとかその麺と引き換えに、しょうゆを少しだけでももらえないかなぁ~。」

うどん職人のどん平にとって麺は命のもとです。しかも、どん平のうどん職人としての長年の秘訣がその麺の製造に練り込まれています。その麺を人に渡すことは、その秘訣を人に渡すことにもなります。しかし、どうしても極うまのうどん作りには、このしょうゆが欠かせない、そう、たぬきのどん平さんは感じていました。

第7話

第6話

「ところで、最も熟成のあるしょうゆは、相当おいしいのかなぁ?」

「そりゃ。もちろん、そうに決まっているじゃなかぃ。少したしなめてみるかぃ。」

そう、言うと、きつねのつね次郎さんはなんだか妙ににこにこして、奥の部屋から葉っぱに乗せたしょうゆをもってきました。

「これだよ。これ。これが最も熟成の進んだしょうゆだよ~ほほっ。」

なめてみると、とてもおいしいしょうゆであることが分かりました。

(これは…、すごいなぁ…)

「ところで、きつねのつね次郎さん、これいくらかなぁ?」

第6話

第5話

きつねのつね次郎さんに、普段使っているしょうゆがいまいちであること、麺は峠の清らかな水のおかげで納得しているが、どうしても汁の味を決めているしょうゆが納得していないこと、そのしょうゆは峠に配達に来ている峠の向こう側のつばめのしゅん太さんによるしょうゆであること、つばめのしゅん太さんのしょうゆ屋とは古くからの付き合いであるが、ここでさらなる極うまのしょうゆでうどん作りをしたいこと、などを伝えた。すると、

「そらー、だめだね。あそこのしょうゆはうちのお店に比べると、一段も二段も味が落ちるよ。なんつったって、うちのしょうゆは熟成期間が長いからね…。」

そう、きつねのつね次郎さんに教えてもらいました。

(なるほど。熟成か…)

第5話

第4話

どん平さんは日頃、峠に住んでいるために、町のとっても華やいだ雰囲気に圧倒されていました。その町の中でも最も大きな建物が、きつねのつね次郎さんのしょうゆ屋であることを前もって聞いていたために、町に着くと、すぐにその場所が分かりました。そっと暖簾をくぐり、中に入ると、

「いらっしゃいませ。」と売り子のりすさんがほほ笑みました。するとお店の奥から、

「おっ、峠のうどん作りのたぬきのどん平さんじゃなかぃ。今日は、どういったしょうゆを探してきたんだぃ?」

と、きつねのつね次郎さんが出てきました。

「え~っと。ここで一番のおいしいしょうゆはどれかなぁ?」

第4話

第3話

幸いなことに、この峠の頂上からはとてもきれいな水が流れていました。その水を使って、小麦を作っていたため、麺はとてもおいしいものとなっていました。ただし、汁がどん平にとってはいまいちでした。水はいいが、しょうゆが納得できなかったのです。噂によれば、町にあるふもとのしょうゆ屋で、きつねのつね次郎さんが極上のしょうゆを扱っているらしい、そう、とあるお客さんから聞くことができました。そこで、そのしょうゆを求めて、一日だけお店を閉めることに決心しました。そして、町にあるきつねのつね次郎さんのお店に向かうことにしました。

第3話

第2話

うどん作りの極意は、まず麺になります。また、それと同じくらいに、汁も大事です。たぬきのどん平さんは、いかにしておいしい麺を作るか、あるいは、いかにしておいしい汁をつくるかということに毎日、命をかけていました。たぬきのどん平さんの住む峠はとても険しく、そこに来るお客さんは、たぬきのどん平さんのお店でうどんを食べることが何よりも心の糧になっている、そう、どん平は信じていたからです。

第2話

第1話

むかしむかし、ある峠に、どん平という名のたぬきがいました。たぬきのどん平さんのお仕事は、うどん職人でした。毎日、毎日、峠を越えてくるお客さんに、「おいしいうどんを食べてもらおう」と、うどん作りに精を出していました。

第1話