第31話

「ところで、クレバ博士。このきつねのつね次郎さんのしょうゆが、なぜ、たぬきのどん平さん、いや、その他のたしなむ人にもおいしく感じるのかを教えてくれませんか?」

「ふ~む~。」

オランウータンのクレバ博士は腕組みをして考え始めました。

「ふ~む~。」

「わ~か~ら~ん~のぉ~。」

クレバ博士にも分からないようでした。そこで、つばめのしゅん太さんは、そのしょうゆがいつも高級そうな葉っぱで包まれている瓶であることを伝えてみました。

「なる~ほどぉ~。」

そうして、クレバ博士はつばめのしゅん太さんが運んできた徳利をじっくりと観察し始めました。

「こ~…れ~…は~…」

第31話

第30話

オランウータンのクレバ博士に調べてもらうと、当時のつばめのしゅん太さんのしょうゆは、先代、あるいは、先々代のしょうゆに比べて、わずかに発酵が少なく、かつ、熟成が足りなかったことが判明しました。そこで、材料、仕込み、熟成期間をもう一度見直して、仲間とともに作ったしょうゆがやがて少しづつお客さんを取り戻したのでした。少なくとも古くからの付き合いのあった取引先の人たちは、

「つばめのしゅん太さん。これで、先代、先々代と並んでも恥ずかしくない、しょうゆ屋になったね。」

と喜んでくれ、つばめのしゅん太さんは三代目としても、自分のしょうゆにも、少しづつ自信が持てるようになったのです。しかし、その矢先の今回のたぬきのどん平さんのしょうゆ事件です。またもや、古くからの付き合いのあった、特に、自分のしょうゆに自信がもてなかった時代もひいきにしてくれたどん平さんには、なんとか御恩を返さなければいけないと感じていました。

第30話

第29話

「つばめの~しゅん太~さん、おもい~だした~ようです~なぁ~。あの~とき~、とても~たいへんそう~でした~ねぇ~。」

つばめのしゅん太さんのお家は、代々続くしょうゆ屋の老舗でした。つばめのしゅん太さんは、ちょうど三代目となります。先々代からこつこつとまじめにしょうゆ作りをしていたつばめ一家でしたが、つばめのしゅん太さんに代わってからというもの、売り上げが少しずつ減り始め、さらに、きつねのつね次郎さんが新たに開発したとされる、今回のしょうゆが販売されると、たちまちお客さんがそっちに流れてしまいました。古くからの付き合いのある取引先も、つね次郎さんのしょうゆの人気に押され、大打撃をくらっていました。ひとりひとり、ともにしょうゆ作りをしていた仲間も減っていき、先代からのレシピ通りに作っていたはずのつばめ一家の、さらには自分の作ったしょうゆに価値があるのか、当時、とても悩んでいたのです。そこで、困っていた矢先に、オランウータンのクレバ博士の研究所のうわさを聞き、当時の自分のしょうゆを調べてもらったのでした。

第29話

第28話

点滅していた赤い文字には、こう、書かれていました。

「ミジュクセイ」

(ミジュクセイ?)

つばめのしゅん太は、パッとその文字を見て、すぐには理解できなかったのですが、

(ミ→未…、そうか!)

次第に分かり始めたようでした。

「やっぱり。」

その時、オランウータンのクレバ博士は言いました。

「これ~は~、まだ~、じゅくして~いない~しょうゆ~です~なぁ~。ほら~、いぜん~つばめの~しゅん太~さん~が~つくった~しょうゆを~かい~せき~したときは~、「ジュク~セイ」と~ひょうじ~された~のは~おぼえ~て~いる~かのぉ~。」

(そういえば…)

つばめのしゅん太さんは、何かを思いだしたようでした。

「そういえば、あの時、しょうゆ屋としての自信がなくなり、自分のしょうゆがどれほどの価値があるものかを、博士に解析してもらったんだった。そのお陰で、少しづつ僕はしょうゆ作りに自信を取り戻したんだ。」

第28話

第27話

「よろしくお願いします。」

そう言って、つばめのしゅん太さんは、オランウータンのクレバ博士に徳利を渡しました。

「え~ら~く、こう~きゅう~そうな~はっぱ~に~くる~まれ~て~いる~、とっ~っくり~ですなぁ~。」

それから、クレバ博士は小さな細長い瓶を取り出して、徳利の中のしょうゆをそれに一滴たらしました。その後、その瓶を機械にセットしてボタンを押すと、その瓶が勢いよく回転し始めました。

「クレバ博士。この機械はなんなのですか?」

「これ~かぁ~。これは~なぁ~、えん~しん~ぶんり~き~といって~、…….、じゃ~よぉ~。」

説明は聞いたものの、つばめのしゅん太さんには、さっぱり分かりませんでした。ただし、しょうゆの成分や何やらが分析できる機械のようでした。しばらくすると、

ピコン(機械の止まる音)

と音がしました。その「えん~しん~ぶんり~き~」が止まったようでした。そして、同時に、その機械の横には何か赤い文字が点滅していました。

第27話

第26話

つばめのしゅん太さんは、オランウータンのクレバ博士の研究所の中に入りました。

「おじゃまします…」

研究所の中は、いろいろな実験機器が並んでいました。その中でも、部屋の中心に置かれている赤や緑のビンから湯気が上がっている謎めいた機械には、非常に興味がわきました。それを察してか、クレバ博士は、

「これ~は~、あた~らしい~おんせん~の~もと~を~かいは~つ~して~いるん~じゃ~よ~。」

と教えてくれました。

「へぇー。」

「とこ~ろ~で~、その~とっ~くりを、とっ~くりぃ~と~みせて~くれる~か~なぁ。」

(ぷっ)

オランウータンのクレバ博士の妙なダジャレにつばめのしゅん太さんは、思わず吹いてしまいました。

第26話

第25話

「まっ~てて~ください~ねぇ。」

ギイイ(戸の開く音)

オランウータンのクレバ博士がそこにいました。

「お~やぁ。つばめの~しゅん太~さん~では~ないです~かぁ。どう~したん~で~す~かぁ。」

つばめのしゅん太さんは、小脇に抱えた徳利を見せて、

「この中にしょうゆが少しだけ入っているのですが、このしょうゆをぜひ分析してくれませんか。実は、たしなむ人によってどうやら味覚が変わるしょうゆらしんです。その原因を調べてほしいのです。」

「な~る~ほどぉ~。まぁ~っ、とにかく~なか~に~入って~ください~な~。」

つばめのしゅん太さんは、研究所の中に入りました。

第25話

第24話

2つ目の峠を越えると、奥のほうの森林から煙が立ち上っているのが見えました。

「あれがオランウータンのクレバ博士の研究所だな。もう一飛びだ。」

つばめのしゅん太さんは、長距離の飛行でやや息が上がっていたものの、煙が見えたことで、再び力強く羽ばたきました。そうして、次第に、煙がだんだんと近づいてくるとともに、クレバ博士の研究所の煙突も見えてきました。

「もう少しだ。はぁはぁ…」

息が上がりつつも、なんとか、クレバ博士の研究所の前に到着しました。

ドンドンドン(戸を叩く音)

「は~ぁ~い~ぃ。」

戸の奥からゆっくりとした返事が聞こえました。それは、間違いなくオランウータンのクレバ博士の声でした。

第24話

第23話

つばめのしゅん太さんは、空に飛ぶのが得意です。しかし、やはり小脇にしょうゆの徳利を抱えての飛行はかなり大変です。さらにオランウータンのクレバ博士がいる研究所は、この峠を超えて、そのまた向こうの峠を超えて、そのまた奥の森林に設立されています。つばめのしゅん太さんといえども、そう簡単に到着することはできません。何度も休憩しながら、つばめのしゅん太さんは必死に飛行を続けました。そこまでして、飛行を続けるには、実はしゅん太さんにも大きな訳があったのです。しょうゆ屋の同業者としてきつねのつね次郎さんをかねてから快く思っていなかった上に、今回は古くからの付き合いのあるたぬきのどん平さんが、そのつね次郎さんの策略にはまったかと思うと、悔しくて仕方がなかったのです。

「きっと、このしょうゆには明らかに仕掛けがある。それを解決しないことには、僕だけでなく、他のしょうゆ屋も商売が上がったりだぃ。」

オランウータンのクレバ博士がいる研究所は、まだまだ見えません。しかし、しゅん太さんの羽ばたきは疲れにもかかわらず、一段と力強いものになっていました。

第23話

第22話

つばめのしゅん太さんは、小脇にしょうゆがほんの少しだけ入った徳利をかかえ、空に飛びあがりました。

「どん平さん、じゃぁ、いってくるよ~。」

「いってらっしゃいませ~。しゅん太さん、よろしくお願いしま~す。」

その後すぐに、いつものつばめのしゅん太さんのしょうゆを使って汁を作り直しました。そして、ねずみのチューたろうさんに、再びうどんを差し上げました。

「ねずみのチューたろうさん、いつものうどんだけれども…、どうかなぁ?」

「これこれ。これこそが、どん平さんのうどんだよ。」

ねずみのチューたろうさんは喜んで食べていました。もちろん、麺だけでなく、汁まですべてを飲み干して完食しました。ただ、やはり、たぬきのどん平さんは、きつねのつね次郎さんからいただいたしょうゆがとてもおいしく感じていただけに、正直に喜ぶことができませんでした。

第22話

第21話

そこで、つばめのしゅん太さんは、たぬきのどん平さんに提案してみました。

「たぬきのどん平さん。そこで、このしょうゆの謎を調べるべく、オランウータンのクレバ博士にしょうゆを解析してもらってはどうだろうか? たぶん、きつねのつね次郎さんに今から掛け合っても、たぬきのどん平さんを始めとして、いろいろなお客さんから妙に絶賛されているこの特殊なしょうゆゆえに、その謎をつね次郎さんも直接は教えてはくれないと思う。クレバ博士の研究所は、この峠のさらに向こうの峠の森林の中にあるので、いっちょ僕が一飛びでこのしょうゆをクレバ博士の元に届けることにしよう。たぬきのどん平さんは、しばらくは、このつね次郎さんのしょうゆではなく、僕のしょうゆでうどん作りをすればいい。つね次郎さんのしょうゆの謎が解けたら、僕も新しいしょうゆ作りにたぬきのどん平さんに協力するよ。」

ねずみのチューたろうさんも傍らでうなずいていました。

「ありがとうございます。つばめのしゅん太さん。」

たぬきのどん平は、つばめのしゅん太さんの心意気にとても感謝しました。

第21話

第20話

「どん平さん。正直に言っていいかな?」

つばめのしゅん太さんが、改まった表情でたぬきのどん平さんに告げました。

「どん平さん。たぶん、きつねのつね次郎さんに騙されているよ。別にどん平さんの舌がおかしくなったわけではないな。」

「えっ…」

何のことかたぬきのどん平さんには、ピンときませんでした。すると、それを察してか、つばめのしゅん太さんは、同業者であるきつねのつね次郎さんの一件について説明し始めました。

「実は、しょうゆ屋の同業者として、きつねのつね次郎さんには妙な噂が流れているんだ。つね次郎さんがお客さんに販売したその手のしょうゆが、巷ではものすごく評判がいい。なのに、他のしょうゆ屋がそのしょうゆをたしなめると明らかに発酵前のしょうゆの素でしかない。すなわち、出来上がる前のまったく熟成の進んでいないしょうゆの元みたいな状態のしょうゆなのに、どのお客さんもそのしょうゆに関して、口々にものすごく熟成の進んだしょうゆと絶賛する。それが、おもしろいことに、決まり切っていつも高級そうな葉っぱで包まれている瓶のしょうゆらしい。もちろん、値段も従来のしょうゆよりも断然、高く設定されている。でも、どのお客さんも、値段よりも、そのしょうゆを選んで買い求めてしまう。そんな、一品らしい。明らかに、同業者にはすこぶる評判が悪いしょうゆなのに、お客さんにはすこぶる評判が良すぎる。そこに、妙な噂が流れているんだ。これは、明らかに何らかの仕掛けをしていると…。」

第20話

第19話

「つばめのしゅん太さん。騙されているとは言っても、このきつねのつね次郎さんにいただいたしょうゆは、おいらにはとても熟成が進んだおいしいしょうゆに感じるのです。もしかして、おいらの舌がおかしくなったのかなぁ?」

つばめのしゅん太さんに改めて尋ねてみました。

「たぬきのどん平さん。もしよければ、そのしょうゆをもらった時の様子を詳しく教えてくれないかな?」

そこで、たぬきのどん平さんは、朝にペリカンの運とくさんがお店に来たこと、その時に、自分の麺を渡したこと、それと交換に一杯のしょうゆをもらえたことをもう一度、説明した。

「じゃぁ、その一杯のしょうゆは何の中のに入っていたか教えてもらえないか?」

たぬきのどん平さんは、そのしょうゆが小さな徳利に入っていたこと、さらに、その徳利は高級そうな葉っぱで包まれていたことを詳しく説明した。

「なるほどね…。」

つばめのしゅん太さんは、何かに気づいたようでした。

第19話

第18話

つばめのしゅん太さんは、嫌な予感がしました。同業者の中でも、金を目当てにあくどい商売をすることで有名であるきつねのつね次郎さんの評判をよく知っていたからです。そこで、つばめのしゅん太さんは、厨房に向かい、皿の上のしょうゆをたしなめてみました。

「ぶっ…、なんだいこのしょうゆは…。」

明らかにつばめのしゅん太さんには、きつねのつね次郎さんが同じしょうゆ屋として、これをたぬきのどん平さんに平気で渡していることに、いらだちを覚えました。

「たぬきのどん平さん。これはただの発酵し始めただけのしょうゆの素じゃないかぃ。とても熟成が進んだしょうゆとは思えない…。」

「へっ…」

「もしかして騙されているんじゃないか?」

「えっ…」

第18話

第17話

「つばめのしゅん太さん、ごめんなさい。きつねのつね次郎さんからいただいた最も熟成の進んだしょうゆが、あまりにもおいらにとっておいしかったので、これでどうしても汁を作りたくなったんです。」

「いいってことよ。気にしなくて。後で、そのしょうゆをたしなめてみるよ。」

たぬきのどん平さんは、少し安心しました。長年の念願であった極うまのうどん作りの夢を追い求めてきたどん平さんでしたが、しょうゆに関しては、まずつばめのしゅん太さんに相談すべきだったととても後悔しました。

「つばめのしゅん太さん。町のしょうゆ屋のきつねのつね次郎さんは、そのしょうゆを最も熟成の進んだしょうゆとして、おいらの麺と引き換えに一杯いただいたんです。おいらの舌にはとってもおいしいしょうゆと感じるのだけれども、おいらの味覚が変わったのかなぁ?」

「どん平さんの麺と…かぃ。どこにあるんだい? そのしょうゆは?」

「厨房の棚の皿の上に、少しだけそのしょうゆが残っているはずです。もしよかったら味見してくれませんか?」

第17話

第16話

たぬきのどん平さんは、気がつくと、厨房の奥の部屋で寝ていました。その側には、ねずみのチューたろうさんと峠の向こう側のしょうゆ屋で、時々、お店にしょうゆを配達に来てくれているつばめのしゅん太さんもいました。

「気がついたかい?」

「おいらは…、いったい…、なんでこんなところで寝ているの…」

ねずみのチューたろうさんは、たぬきのどん平さんに事情を説明しました。そして、どうやら厨房で倒れたことを、何となくたぬきのどん平さんは思いだしました。

(そっか~…、あまりにもショックで…)

「お店の前に、”今日は事情につき休業”と貼り紙しといたから、今日はゆっくりとやすみなよ。」

ねずみのチューたろうさんの優しさが目に染みました。そして、隣にいたつばめのしゅん太さんも励ましてくれました。たぬきのどん平さんは、例え、一日といえども、しょうゆを変えてしまったことに、古くから付き合いのあるつばめのしゅん太さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

第16話

第15話

(極うまのしょうゆだと確信して汁を作ったはずなのに、どうして…)

たぬきのどん平さんは、急にめまいがして、そのまま厨房に倒れてしまいました。

「どん平さん~、どう

したん

だぃ~。」


お店からねずみのチューたろうさんが、厨房にかけ込んでくるのが、うっすらと見えました。そして、ねずみのチューたろうさんが側に来るか、来ないかのうちに、そのままたぬきのどん平さんは気を失ってしまいました。

第15話

第14話

「ねずみのチューたろうさん、どうかな? 実はしょうゆを変えてみたのだけれども…。」

たぬきのどん平さんは、恐る恐るねずみのチューたろうさんに聞いてみました。

「ふ~む。」

少し考え込んでいるようでした。

「なんていえばいいのかなぁ~。麺は抜群においしいよ。これぞ、まさしく、どん平さんの麺だ。でもなぁ~、汁がなぁ~。」

たぬきのどん平さんは、がっくりと肩を落としました。

(そんなはずでは…)

厨房に戻って、汁を確かめてみました。明らかに、どん平さんにとっては、以前の汁よりもおいしく感じます。

第14話

第13話

「勘定は、ここに置いとくよ。まっ、俺は前のどん平さんのうどんの方が、絶対おいしいと思うよ。」

そう、セリフを残して、うまのパカラックさんは店を出ました。うまのパカラックさんは、いつも汁まで飲み干すのに、今日に限って丼の中に汁がかなり残っています。たぬきのどん平は、その様子にとてもショックでした。それ同時に、

ガラガラ(戸の開く音)

もう一人の常連でもあるねずみのチューたろうさんがやってきました。チューたろうさんは、うどんだけではなく、ラーメンにも造詣が深い方です。うまのパカラックさんには今回のうどんがいまいちのようでしたが、ねずみのチューたろうさんには、この熟成が進んだ極うまのしょうゆの汁の味を気に入ってくれるかもしれない。気分新たに、そう、たぬきのどん平は期待しました。

「どん平さん。うどん、いつものように大盛りで頼むよ。」

「かしこまりました。」

たぬきのどん平は心をこめてうどんを茹で、きつねのつね次郎さんからいただいた極うまの醤油の汁をかけ、ねずみのチューたろうさんの前に差し出しました。

「おっ、いつものうどんと感じが違うね。どれどれ…」

たぬきのどん平さんは、うまのパカラックさんの件もあって、心臓がドキドキしていました。

第13話

第12話

思い切って、うまのパカラックさんに今回のうどんの印象を尋ねてみました。すると、こう、返事が返ってきました。

「なんていうかなぁ。ちょっとしょうゆに熟成がたりないというか、麺はいつも通りたぬきのどん平さんがこしらえたコシと歯ごたえがあってこれはうまい。けれど、汁の味を決めているしょうゆに、やはり熟成がないというか、なんというか中途半端なしょうゆだねぇ~。」

うまのパカラックさんは常連で、いつもうどんの批評を的確に示してくれているので、うそはないはずです。しかし、たぬきのどん平にとっては、きつねのつね次郎さんからもらったしょうゆは、とてもおいしく感じている。熟成も素晴らしいと感じている。なのに、パカラックさんいわく、このしょうゆには熟成がたりないようなのです。たぬきのどん平は、自分の舌を疑いました。

(でも…、そんなはずは、ないのだが…)

第12話

第11話

出来上がったうどんをうまのパカラックさんの元に持って行きました。

「どうかなぁ?」

「いつもとなんだか味が違うね。」

「そうでしょぅ。実は町のきつねのつね次郎さんから、最も熟成のあるしょうゆをもらって、それで汁を作ったんだよ。今までで最もおいしいうどんになったと思っているんだなぁ。これが…」

「ふ~ん。」

今までで一番おいしいうどんを作ったはずなのに、うまのパカラックさんはなぜか浮かない顔をしています。

「僕は、前の方が好きだなぁ…。」

うまのパカラックさんは、そう呟きました。

「えっ?」

第11話